・・読売新聞2月24日付記事より・・
3月23日の第91回選抜高校野球大会開幕まで1か月。昨夏の甲子園で
準優勝した秋田・金足農の吉田輝星投手(現プロ野球・日本ハム)に憧れ、
背中を追うエースがいる。21世紀枠で出場する石岡一は普通科に加え、
農業系学科を持つ高校。造園科2年の岩本大地投手(17)は吉田投手の
投球術に学び、めきめきと力をつけている。
18日の午後、校舎から約4キロ離れた石岡市内の農場で、造園科の2年
生36人が竹垣作りの実習に臨んでいた。1㍍50間隔で立つ2本の柱に、
ノコギリで長さを整えた竹3本を地面と水平にクギで打ちつける。「やば
い。先生、竹切りすぎた」。夏の造園技能検定に向け、岩本投手も奮闘中
だった。
剪定や庭園造りなど、体を動かす実習が多い。腰を低くして行う雑草取り
は特にハードだが、「体力面も鍛えられる」と励んでいる。
野球部員は造園科や園芸科、普通科とバラバラで、授業を終え、全員が集
まるのは午後5時前。全体練習が限られる中、昨秋の県大会でベスト4に
入った原動力が岩本投手だ。準々決勝の土浦日大戦は2失点完投と、夏の
甲子園に出場した強豪私学を抑え込んだ。
昨夏、テレビで見た光景が目に焼きついた。秋田県大会決勝戦ハイライト
で、金足農の吉田投手が11奪三振で完封。同じ農業系で学び、約1㍍75
の身長も、投げる球種もほぼ一緒。ただ、レベルの違いに愕然とした。投
げる間を微妙に変え、打者のタイミングをずらす冷静なマウンドさばきが
胸を打った。「思い描いていた勝てる投手。手本にしたい」
甲子園でも快進撃を続ける姿に魅せられた。特に直球によるギアの上げ下げ
だ。制球重視で低めに決めたり、球威で押して空振りやファウルを狙ったり
と、変化球を交えるだけでなく、直球の使い分けで投球の幅は広がると気づ
かされた。
それ以来、吉田投手の動画を見て、練習を重ねた。2日に1度はスマートフ
ォンで動画をチェック。最速147キロの直球をより生かせるようになって
きており、「金足農に続き、大舞台で旋風を」と周囲も期待を寄せている。
本県の公立高校が春のセンバツに出場するのは、2009年の下妻二以来
10年ぶりだ。
憧れの存在と同じマウンドに立つ「造園球児」も自身の成長に手応えを感
じている。21世紀枠での出場に、「うれしいけど、自分たちの力で行き
たかった」と話しつつ「完封して校歌を歌いたい」と力を込める。