克つ  球児たちの夏③  甲子園経験 狙うは優勝 石岡一 (7月8日付 読売新聞茨城版))

「もう一度甲子園に戻ろう」。昨春の選抜甲子園に21世紀枠で出場した石岡一(石岡市)

の主将・古屋健太郎(3年)は新チーム始動時、チームメートにそう力強く呼びかけた。9

番中堅で出場した憧れの聖地は「アウトになっても幸せ。頑張った者へのご褒美のような場所

だった。主将就任後、あいさつや道具の扱い方など細部の徹底を部員に促し、嫌われ役を務め

てきたのも、全てはもう一度、あの舞台に立つためだった。

だからこそ、甲子園の中止はショックだった。皆の前では気丈に振る舞ったが、家で一人にな

ると涙がこぼれた。 そんな失意の中に差した光が独自大会だった。優勝して、甲子園にふさわ

しいチームだったと証明しよう・・。甲子園中止発表の数日後、3年生全員で新たに意思統一

した。 強豪私立を倒さなければ一番になれないことはよくわかっている。昨夏は霞ヶ浦、秋は

常総学院にいずれも敗れた。 「名前負けしていた」。エースの小松崎駿(3年)は悔しさを忘

れない。強打の私立を想定し、この冬は新たに変化球を二つ習得して配球パターンを広げた。最

後の夏に向けてオーダーしたグラブには、自分の投球で一番になる、との意味を込め「天下無双」

と刺しゅうを施した。「独自大会は思い出づくりじゃない。私立を倒して優勝する」。エースの

気概を胸に、真っ向勝負を挑む覚悟だ。

「幸せな3年間だった」 石岡一・女子部員

独自大会最後の練習試合となった5日、石岡一の女子部員、浜田芽里(めりい)(3年)、八回

の守りからセカンドの守備についた。女子部員は規定で公式戦には出場できないため、浜田にと

って事実上の”引退試合”だった。 規定のことは知っていたが、同校でプレーした2人の兄に憧

れ、迷わず入部した。 高校では男女の体力差を痛感し、試合で打席に立つと長打の警戒を解かれ

外野手に前で守られることもあった。悔しさから「辞めたい」と思うことは何度もあった。

それでも続けてこられたのは同級生の仲間がいたから。苦しい時、いつも励ましてくれた。この

日もそうだった。強い当たりをはじいて出塁を許すと、すかさず「気にするな」と仲間が声を掛

けてくれた。 一足先に引退し、独自大会はスタンドから仲間を応援する。「幸せな3年間だっ

た。必死に練習してきてよかった」。そう言って、こみあげる涙をぐっとこらえた。 (敬称略)