・・産経新聞WEB3月18日記事より・・
23日に開幕する第91回センバツ高校野球大会に、茨城県勢として初の21世紀枠
で出場する県立石岡一高(石岡市石岡)の選手たちが18日、兵庫県西宮市の甲子園
球場へ向けて出発した。石岡市国府の石岡ステーションパークで行われた出発式では、
酒井淳志主将が「全員野球で、校歌を歌えるよう戦う」と誓い、夢の舞台へ石岡一高
ナインが力強く駈けだした。
石岡一高の初戦は大会3日目の第2試合。相手は岩手県代表の盛岡大付だ。
「速球への対応と守備の連携を高めたい」
出発を控えた13日、酒井主将は初戦までに乗り越えるべき課題をこう考えていた。
園芸科、造園科と普通科。複数の学科が存在する同校は、学科ごとに授業時間が異
なり、選手全員が同じ時間に練習を始めるのが難しい。休日も実習や資格試験など
に時間を割かなければならず、練習に参加できない選手がいるため、部員全員が集
まることはほとんどない。
「個人練習の質を高めることが鍵だ。ティーバッティング1つをとっても、1球1
球考えて打つ。とにかく個人で考えて行動し、質の高い練習につなげている」と酒
井主将は語る。甲子園に向けて、全体での守備連携の調整を急いできた。
練習環境にこうした制約がある中でも、実績を残してきた。昨秋の県大会では、昨
年の選抜ベスト16の明秀日立や、昨夏に2年連続で夏の甲子園出場を果たした土
浦日大など強豪を次々と撃破し、4強入り。県立高ながら名門私立高にも引けを取
らない実力をみせつけた。
県勢初の21世紀枠を獲得したのはこうした実績に加え、最速147キロの直球を
繰り出すエース、岩本大地選手の存在も大きい。中学時代に軟式野球で名を上げ、
注目の投手だった岩本選手。石岡一高を選んだのは「公立高で強豪私立を打ち破り
たい」というチャレンジャー精神と、川井政平(しょうへい)監督の存在だった。
岩本投手は中学3年の春、関東大会で躍動する石岡一高ナインの姿を見て「ここだ」
と思った。同じ頃、中学の大先輩でもある川井監督からアプローチがあり、川井監
督の元で強豪私立を倒すという決意を固めた。
約140キロの平均球速を誇る直球だが、甲子園に向けて変化球にも磨きをかけた。
「投げ込みで変化球の制球も高め、自分が完封して校歌を歌う」と強気だ。
チームをまとめる酒井主将は中学時代、軟式野球の県代表チームとして岩本選手と
ともに全国の相手と渡り合った。高校に進学する際、強豪私学に行こうか、石岡一
高に進むか迷ったが、岩本選手の進路を知り、迷いが消えた。「岩本となら絶対
に甲子園に行ける」。その思いで進学した石岡一高でついに念願をかなえた。
「甲子園の相手はレベルが違う。だが、100%の力は出し切り、初戦突破を目
指す」。酒井主将は輝いた目でそう語った。川井監督も「岩本が前半を最低でも
1、2点に抑えてくれれば勝算はある。OBや地元の皆さんの思いに応えられる試
合を見せたい」と話していた。
創部100年以上の伝統とプロ注目の右腕、岩本選手を有する石岡一高が、数多
のドラマを生んだ甲子園の地で、県立高の意地を見せる。(永井大輔)