・・スポーツ報知WEB3月26日付記事より・・
大善戦だった。ゲームセット後、甲子園の空に温かい拍手が鳴り響いた。21世紀枠で選出され、
春夏通じて甲子園に初出場となった石岡一(茨城)が聖地に爽やかな風を吹かせた。みちのくの
強豪・盛岡大付(岩手)に延長11回、サヨナラで敗れはしたが、下馬評を覆す健闘ぶりだった。
原動力となったのはエース右腕の岩本大地だ。初回先頭から4者連続空振り三振斬り。この日の
最速144キロのストレートとスライダー、チェンジアップなどを操り緩急も駆使して、8回ま
で2安打無失点、11Kと場を支配した。2点リードの9回2死二、三塁、勝利まで相手を「あ
と1球」まで追い込んだが、盛岡大付の底力も見事だった。両校の必死さに引き込まれてしまう
好ゲームだった。
岩本は中学まで軟式。県大会では準優勝し、県の選抜メンバーにも選ばれた。強豪私学からの誘
いを断り、八郷中の先輩でもある川井政平監督(44)が率いる石岡一への進学を決めた。
子供の頃はどんな日々を送っていたのだろう。試合前、父・紳さん(48)に聞いた。
「ゲームとかは一切、やりませんでしたね。普段から、遊びが野球なんですよ。小学校、中学校
と部活のない日でも、仲間と野球で遊んでいました。その中で上達していったんです」
「遊びが野球」-。その言葉が印象に残った。最近の子供たちにとって、野球が遊びではなくな
りつつあると感じていたからだ。近所の公園に行けば「キャッチボール禁止」の看板が立つ。
野球のルールを知らない子供たちも多いと聞く。野球がどちらかというと「習い事」になってい
る現状を、少し寂しく思う。
球審が「プレーボール」を宣告する。「白球で遊ぼう」としては、意訳しすぎだろうか。石岡一
対盛岡大付の2時間26分からは、両校の「甲子園で闘える喜び」が存分に伝わってきた。
岩本の「大地」という名前には「みんなを支えられるような、大きな人間になってほしい」とい
う想いが込められているという。身長175センチは決して大柄ではないが、マウンド上から積
極的にナインに声を掛け、強力打線と対峙する姿は、大きく見えた。
「小さい頃から甲子園でやるのは夢でした。成長して、また夏に戻ってきます」
試合後の会見をそう結んだエース。茨城の子供たちの目にも、その雄姿はとても眩しく映ったに
違いない。(野球デスク・加藤 弘士)