・・スポニチアネックスWEB3月30日付記事より・・
熱闘が繰り広げられる高校野球選抜大会。1回戦敗退に終ったが、石岡一(茨城)の岩本大地
投手(3年)の投球に驚いた。
岩本は、昨夏の甲子園で準優勝に輝いた金足農の吉田輝星投手(現日本ハム)に憧れる17歳。
農学校をルーツとする同校を最速147キロの直球で甲子園に導き、「輝星2世」と呼ばれる。
しかし、実際に投球を見ると、吉田輝とは違った武器を持っていた。
23日の盛岡大付(岩手)戦。昨秋の岩手県大会で大船渡の157キロ右腕・佐々木朗希投手
(3年)を攻略した相手に対して策を練った。吉田輝に憧れているため、直球での勝負にこだ
わるのかと思えば、「相手は速球に強いので変化球で緩急を。得意な変化球ですか?全部です」。
実戦でも言葉通りの投球を体現した。
変化幅の違う2種類のスライダー、90キ台のカーブ、チェンジアップと全球種を駆使して初回
先頭から4者連続で奪三振。直球に「一番自信がある」としながら冷静に変化球で勝負して8回
まで2安打無失点と好投した。
尻の大きな体型や、走者を背負ってからけん制で打者との間を取る投球術と、「動画で吉田投手
の投球を参考にしている」とだけあって、随所に重なる部分はある。それでも、岩本の最大の武
器は引き出しの多さだった。日本ハムの大渕隆スカウト部長も「(吉田輝は)直球で勝負するタ
イプだけど、彼(岩本)は変化球が多彩なタイプ。試合を支配している」と評価。聖地デビュー
で堂々と躍動した。
それだけに2点リードの9回2死二、三塁。あと1死で勝利をつかんだ場面での配球ミスを悔や
んだ。外のスライダーで追い込むも、変化球にタイミングが合わない打者の決め球に内角の直球
を選択。右前に運ばれて同点とされ、延長でサヨナラ負けを喫した。岩本はこの場面を振り返っ
て「一本調子にならないようにというテーマにとらわれて、外に意識させて内の直球で詰まらせ
ようと。変化球を投げていれば結果は変わっていた」。試合が終われば客観的に反省できただけ
に、悔しい一球となった。
ただ、今回の敗戦で大舞台の怖さを知ることができた。「打者の嫌がる変化球をテーマに(冬は)
練習してきた。夏までにもっと細かい部分を磨きたい」と岩本。吉田輝も参考にしつつ、自分の
武器も磨くという。憧れと自己分析を持ち合わせる岩本は、今夏ブレークの予感を感じさせた。
(記者コラム・武田勇美)