名スカウトがセンバツで選んだドラフトの逸材8人 (TEH PAGE WEB)

・・THE PAGE WEB4月3日付記事より・・

いよいよセンバツ高校野球は習志野対東邦の決勝を迎える。東邦の「投手・3番」の”二刀流”

石川昴弥はプロ注目のドラフト候補だが、今大会では多くのドラフト候補が躍動した。

ヤクルトのスカウト責任者として、古田敦也、宮本慎也らを発掘した片岡宏雄氏に、気になる

逸材8人をピックアップしてもらった。

片岡氏は、今大会を総括して「ドラフト上位候補として評判の投手らを擁するチームが勝ち進

なかった。今日良くても明日は悪い。春の高校野球の特徴である不安定さが顕著だった。そう

いう意味でスカウトは困っただろう」と、厳しく評価した。

「不安定」なセンバツでも片岡氏の目に留まった候補はいた。星稜奥川恭伸だ。屈指の好カ

ードとなった1回戦の履正社戦では、17奪三振の3安打完封勝利。2回戦の習志野戦で散っ

たが、最速153キロをマークした。

「やはり一番は奥川になるだろう。最速153キロをマークした。変化球の質、コントロール

も含めて完成度は高い。17三振を奪った履正社戦では、優勝までを逆算して、力を抜いて投

げているのかな、と思っていたが、サイン盗み騒動を試合後に監督が起こした習志野戦では、

スライダーに頼り過ぎていて、しかも、そのほとんどが甘かった。ボールをじっくりと見られ

るほど威力がなかった。これが3年春の段階での高校生の怖さ。どこかのスカウトがマー君級

と言っていたが、それはあくまでも社交辞令的なスカウトコメント。夏までの成長を見る必要

があるだろう。現段階では1位で競合するような力はない」

投手では、奥川の他に、龍谷大平安戦で、延長11回を一人で170球投げきって4安打2失

点で敗れた津田学園の大型右腕の前佑囲斗、八戸学院光星戦で完封勝利し最速150キロをマ

ークした広陵河野佳、21世紀枠から出場して盛岡大付戦で延長11回サヨナラ負けを喫し

たが、最速144キロの直球にスライダー、チェンジアップをうまく使って11三振を奪い存

在感を示した石岡一岩本大地の3人の名前がリストアップされた。

「津田学園の前と龍谷大平安の左腕の野沢の2人が延長11回まで投げ合ったが、プロ向きな

のは前の方だ。重心がしっかりと安定して球速は、140キロ前後だが、打者の手元でボール

が伸びるような球質があった。ノビシロを感じさせる。広陵の河野のいいところは安定感。最

速150キロが出ていたし、いわゆる球筋のいいピッチャーだ。石岡一の岩本は、昨年旋風を

巻き起こした金足農の吉田輝星の姿に重なる。下半身主導型のフォームも似ているし身長はな

いが球離れがいい。最速は144キロ程度だったが、もっと出るだろう。河野も岩本も変化球

でカウントを取れて、緩急、間をしっかりと作ることができる。夏へ向けて成長が楽しみだし

ドラフトにかかってくる素材だと見ている」

逆に評価を下げたのは大会ナンバーワン左腕と評価されていた横浜及川雅貴だ。1回戦の明

豊戦では5失点して3回持たなかった。

「踏み出すステップの位置が1球、1球変わってしまってバラバラ。いかに下半身が安定して

いないかという証拠だ。かかったボールはさすがだし、左腕でピッチャーらしいピッチャーは

彼くらいなのでプロのスカウトは追いかけていくのだろうが、1球ごと、1試合ごとに、いい

悪いが出てしまう不安定さをどこまで克服できるかが問題」

一方、野手では、決勝に進んだ東邦の投手&3番打者の石川を評価した。投げては、全試合に

先発して、2試合に完投勝利し、2失点以上は許していない。角度のあるストレートにスライ

ダー、スプリットが切れる。3番打者としては、準決勝の明石商戦ではヒットがなかったが、

2回戦の広陵戦では、河野からレフトスタンドへ一発を放り込み、ここまで4打点と勝負強さ

を発揮している。

「投手としては角度のある球威に加えて落差のある変化球があって安定しているので簡単には

打たれない。身体能力の高さ、頑丈さは魅力だが、投球フォームは野手。プロでは野手に専念

するべきだろう。リストが強いのが特徴でポイントが近くミート力もある。石川のような将来

のクリーンナップ候補の右打者は、どのチームも欲しい」

もう一人注目したいのが、山梨学院野村健太だ。24-5の記録的なスコアで快勝した1回

戦の札幌第一戦ではバックスクリーンに2発叩きこんで度肝を抜いた。

「山梨のデスパイネと呼ばれているそうだが、パワーは、まさに外国人助っ人級だ。風もあっ

たが、甲子園のあそこにまで飛ばす飛距離を持った打者をここ数年見たことがない。バックス

イングをほとんどとらないタイミングの取り方なのでプロの速球にもすぐ対応できるのではな

いか。ただ不発に終わった2回戦の筑陽学園戦では、おや?っと思った。凡退の中身が悪かっ

た。やはり、そこはまだ高校生。それでも外野手という点でもプロでチャンスをもらいやすい

し石川共々、スカウトが注目する右打者だと思う」

片岡氏は、「キャッチャーにもいい素材が目立った」という。

気になったのは、智弁和歌山東妻純平、筑陽学園の進藤勇也、大分の江川侑斗の3人。一人

挙げるとすれば、4番を任され1回戦の熊本西戦では豪快な3ランを放つなど、攻守に渡る活

躍でチームをベスト8へ導いた東妻だという。

「キャッチャーは頑丈な体が要るが、あまりでかくても俊敏性に欠ける。東妻は、体の動きに

センスを感じさせる。パンチもあるし肩も強い。近代野球向きの捕手だと思う」

平成最後のセンバツから令和の夏の甲子園へ。スカウトは、秋のドラフトへ向けて有力候補の

球児の成長を追い続けることになる。