高校野球ライターの松倉雄太さんに全地区の戦力を分析してもらい、今夏の有力校を占っていく連載は第5回。関東・東京地区は6日の茨城・東西東京地区などを皮切りに、各地で開幕する。激戦区・神奈川など実力校がひしめくエリアが多く、どこが勝ち抜くか目を離せない展開になりそうだ。
茨城
◎常総学院
◯水戸商
△石岡一
強力打線の常総学院が一歩リード。主砲の菊田拡和(3年)は高校通算55本塁打を放つ、プロ注目のスラッガーだ。菊地壮太、鈴木琉晟(ともに3年)ら前後にも長打力のある打者がそろっている。昨秋の関東大会では桐蔭学園との初戦で逆転サヨナラ満塁本塁打を浴び、センバツ出場の道が絶たれた悔しさを夏に晴らす。
水戸商のエース・小林嵩(3年)は166センチと小柄ながら投げっぷりがよく、140キロを超える直球を投げ込む。打者としても4番を務め、投打で19年ぶりの夏へ導けるか。
センバツ出場の石岡一は関東屈指の右腕・岩本大地(3年)がどこまで復調してくるか。2年生右腕・小松崎駿との二枚看板で春夏連続出場を目指す。
秋準優勝、春優勝と茨城大会で結果を残している藤代も小島拓也、中山航(ともに3年)と二枚看板が安定している。常総学院と同じブロックに入った明秀日立、藤代と同じブロックの霞ケ浦などがダークホースになってきそうだ。
栃木
◎佐野日大
◯作新学院
△栃木工
秋春連覇の佐野日大と9連覇を目指す作新学院が同じブロックに入った。勝ち上がれば準々決勝で対戦する。
佐野日大のエース・松倉亮太は制球力に長けた好右腕。春先に手に打球を受けて負傷し、県大会、関東大会とベンチに入れなかったが、代わってマウンドを任された左腕・松本翔大が成長した。二枚看板を確立し、9年ぶりの夏を手繰り寄せる。
作新学院は日本ハムでプレーする石井一成の弟・石井巧(3年)が主将を務める。兄と同じ遊撃手を務め、攻守に兄譲りのセンスを感じさせる選手だ。昨夏は1番・右翼手で甲子園に出場した2年生の横山陽樹は、3月に大船渡の佐々木朗希(3年)から三塁打を放った。初戦で難敵の白鷗大足利と対戦する可能性があり、ここでどんな戦いをするかが大会全体のポイントになるかもしれない。
反対側のブロックでは春準優勝の栃木工が面白い。春の県大会で作新学院、国学院栃木などの私立勢を次々と破った。青藍泰斗は中日の石川翔を兄に持つ、外野手の石川慧亮が2年生ながら強打でチームを引っ張る。国学院栃木の2年生エース・神山陽登、文星芸大付の饗庭陽生(3年)らも栃木屈指の好投手だ。
群馬
◎前橋育英
◯健大高崎
△利根商
4連覇を目指す前橋育英が秋春と群馬大会を制し、今年も本命となりそうだ。エースの梶塚彪雅(3年)は140キロを超える直球が武器の本格派で、制球力もある。打線は丸山大河、剣持京右(ともに3年)の甲子園経験者が引っ張る。昨秋の関東では準々決勝で敗れ、あと一歩でセンバツ出場に届かなかった。悔しさを夏にぶつける。
ライバル・健大高崎は田口夢人、柳澤光星(ともに3年)らが強力打線を形成。投手陣は今年も継投で臨みそう。3年連続で決勝戦で敗れている前橋育英を、今年こそ倒せるか。両者が勝ち上がれば、今年もこの二校が激突するのは決勝となる。
ダークホースは元桐生第一の福田治男監督が就任した利根商。主将の高橋晃生(3年)は開会式での選手宣誓を引き当て、勢いをつけて試合に臨む。
前橋工の黒澤颯斗は最速142キロの好右腕。左腕では前橋商の井上温大(3年)に注目したい。
埼玉
◎春日部共栄
◯花咲徳栄
△浦和学院
春のセンバツで1回戦敗退の悔しさを味わった春日部共栄はエース・村田賢一(3年)が成長。春の県大会ではノーヒットノーランを達成した。打者としても4番を務める、投打の大黒柱だ。打線は黒川渓と木村大悟(ともに3年)の俊足1、2番コンビでかき回す。6月に本多利治監督が復帰し、5年ぶりとなる夏の甲子園へ視界良好だ。
5年連続の夏を狙う花咲徳栄はCシード。高校日本代表候補研修合宿に参加したショート・韮澤雄也(3年)、2年生スラッガーの井上朋也ら強力打線が看板だ。
昨夏の南埼玉代表・浦和学院は34年ぶりのノーシード。永島竜弥(3年)、美又王寿(2年)など昨夏の甲子園を経験した投手陣がどこまで引っ張れるか。勝ち上がれば4回戦でAシードの浦和実と対戦する可能性があり、大会を占う一戦になるかもしれない。
山村学園は春3位から関東大会ベスト4と実績を積んだ。習志野をコールドで破った打線のつながりを夏も見せたい。
同じく春の関東大会に出場した東農大三の145キロ右腕・飯島一徹(3年)のピッチングにも注目。好左腕・米山魁乙(3年)のいる昌平に加え、埼玉栄や聖望学園なども侮れない。
千葉
◎習志野
◯木更津総合
△専大松戸
センバツで3度逆転勝ちし、準優勝した習志野が本命。エース・飯塚脩人(3年)を中心に、左の山内翔太(2年)、アンダースローの岩沢知幸(3年)など豊富な投手陣を擁し、継投を駆使する。野手も角田勇斗(2年)、根本翔吾(3年)とセンターラインの堅守が光る。ベンチの最前列に立って大声でチームを盛り立てる記録員・小杉秀次朗(3年)の存在も欠かせない。
4年連続出場を狙う木更津総合は2年生右腕・篠木健太郎が成長。昨夏の甲子園で149キロをマークした根本太一(3年)との二枚看板を形成する。
専大松戸は春の関東大会でベスト4進出が自信になった。サイドスロー右腕・横山陸人(3年)は最速145キロの直球が武器。同じく右腕の杉田智也(3年)など他の投手陣も充実している。
秋春ベスト4の銚子商は14年ぶりの夏を狙う。成東、千葉商、我孫子など古豪がそろったゾーンを勝ち抜けるか。中央学院はエース畔?舜(3年)を中心に2年連続出場を狙う。
東東京
◎二松学舎大付
◯帝京
△東亜学園
二松学舎大付は昨夏の甲子園メンバーが多く残る。左腕の海老原凪(3年)は球威が増し、右の大庭颯仁(3年)も成長。甲子園でマスクを被った2年生捕手・山田将義が冷静にリードする。打線も右田稜真(3年)を中心に強力。初戦で夏5回甲子園出場の修徳と対戦する可能性があり、いきなり大一番となるか。
平成最初の夏の甲子園を制した帝京は188センチ左腕・田代涼太(2年)が成長し8年ぶりの甲子園を狙う。実践学園、堀越など実力校が同居したブロックを勝ち抜けるか。
秋ベスト4の東亜学園は高校日本代表一次候補に選ばれた左腕・細野晴希(3年)が大黒柱。ノーシードで挑む今夏は、好投手2人を擁する第1シード・関東一と同じブロックに入った。
都立勢では春ベスト4で第1シードを獲得した小山台を筆頭に、雪谷、紅葉川、文京、城東などが上位候補になってきそうだ。
西東京
◎東海大菅生
◯日大三
△国士舘
都大会では秋準優勝、春優勝、春の関東大会でも準優勝と実績を残してきた東海大菅生が一歩リード。エース・中村晃太朗(3年)は三振がとれるタイプの左腕で、関東大会は20イニングで無失点と抜群の安定感を発揮した。打線も春の都大会準々決勝で日大三から12得点。センバツ出場をあと一歩で逃した悔しさを夏に晴らす。
日大三はドラフト候補の150キロ右腕・井上広輝(3年)と191センチの長身右腕・廣澤優(3年)と好投手が2人いて、投手陣に絶対の自信を持つ、第3シードになったが、東海大菅生や早稲田実とは別ブロックとなった。2校を続けて倒す必要がない組み合わせは吉兆になるか。
秋の都大会を制した国士舘はエース・白須仁久(3年)が成長。さらに山田裕也(3年)が台頭してきた。早大学院、駒場学園などの難敵が入ったブロックを勝ち抜いて、春夏連続出場への足掛かりをつかめるか。
早稲田実は日本ハム・清宮幸太郎の弟、清宮福太郎(1年)が入部して話題になった。エース・伊藤大征(3年)は140キロを超える本格派。秋春ベスト8の国学院久我山も、攻守の要となる宮崎恭輔捕手(3年)を中心に、28年ぶりの夏を目指して戦力充実。好投手のいる片倉、八王子実践、昨夏準優勝の日大鶴ケ丘なども上位候補だ。
神奈川
◎東海大相模
◯横浜
△桐蔭学園
全国2番目、181チーム参加の最激戦区。
春の関東大会を制した東海大相模は練習試合も含めて現チームではほとんど負けなし。投打で注目される遠藤成(3年)を中心に、昨春センバツベスト4を経験した左腕・野口裕斗(3年)など投手陣が充実している。山村崇嘉、西川僚祐の2年生スラッガー2人を筆頭に打線も強力。4年ぶりの全国制覇も狙える戦力があり、まずは神奈川制覇を狙う。
4年連続出場を狙う横浜はエース・及川雅貴(3年)に復調の兆しが見えてくるかが最大のポイントになる。打線は、センバツではケガの影響で出場機会が限られた度会隆輝(2年)が復帰したのが好材料。勝ち上がれば東海大相模とは準決勝で激突する組み合わせになった。
秋の関東王者・桐蔭学園は春の県大会初戦で敗れてノーシードとなった。抽選でどこに入るか注目されたが、春に敗れた向上と同じブロックに入った。高校日本代表候補研修合宿に参加した遊撃手・森敬斗(3年)を中心に、課題の投手陣を援護したい。
同じくノーシードの慶應義塾は東海大相模と4回戦で対戦する可能性がある。昨年は春夏連続で甲子園を経験した捕手・善波力(3年)を中心に2年連続の夏を目指す。
桐光学園は2年生左腕・安達壮汰が成長。谷村然と冨田冬馬(ともに3年)のダブルエースに割って入ってきた。第1シードの鎌倉学園は昨夏の南神奈川大会決勝で敗れた悔しさを晴らしたい。このほか、日大藤沢、藤沢清流、厚木北なども力がある。
山梨
◎山梨学院
◯東海大甲府
△駿台甲府
過去3年、夏の山梨大会決勝はいずれも二桁得点。今年も強力打線で4連覇を狙う山梨学院が本命だ。「山梨のデスパイネ」こと主砲の野村健太(3年)は高校日本代表候補研修合宿後にケガで離脱したが、他の野手陣が奮起して春の県大会優勝に繋げた。捕手の栗田勇雅(2年)は冷静なリードと強肩で、相澤利俊(3年)ら豊富な投手陣を引っ張る。
東海大甲府は秋の県大会を制したものの、開催地1位シードの関東大会では初戦の準々決勝で敗退。センバツ出場を逃した。加藤匠と鈴木虎我(ともに3年)が投打両面で軸になる。
駿台甲府は春準優勝で関東大会に出場した。主将の杉田大貴(3年)は山梨屈指の好打者。チームを初の甲子園出場に導けるか。
Aシードである甲府商のブロックに、秋の関東大会で横浜と戦った甲府工が入った。お互い勝ち上がれば3回戦で対戦するため、大会を占う一戦になりそう。このブロックには昨夏準優勝の帝京三も入っており、どこが勝ち抜いてくるか。山梨学院と同じブロックに入った日本航空は豊泉啓介新監督が就任し、復活を目指す。